江戸べっ甲とは
江戸べっ甲の概要
1.江戸べっ甲とは
江戸べっ甲とは、主に東京都で生産される伝統的工芸品で、南国の海に生息するタイマイというウミガメの甲羅を用いて作られます。
2.江戸べっ甲の特徴
タイマイの甲羅を加工して作られるかんざしや櫛は、淡い黄白色の輝きを持ち、その美しさと肌触りの良さが特徴です。
タイマイの甲羅は、熱を加えると自由に加工出来るため、様々な製品を作ることができます。
江戸べっ甲の材料
1.タイマイの甲羅
江戸べっ甲の材料であるタイマイは、大西洋、カリブ海、インド洋の赤道付近の暑い所にしか生息していないウミガメで、大きいものは全長180㎝、体重200kgにもなります。
江戸べっ甲の材料となるのは、タイマイの背甲と腹甲、そして爪です。
江戸べっ甲の歴史
べっ甲細工の歴史は非常に古く、奈良の正倉院にも一部にタイマイの甲羅を使った楽器などが残されていることからも明らかです。べっ甲の製造技術が、朝鮮を経て長崎に伝えられたのは16世紀頃のことです。
元禄期に貼り合せの技法が江戸に伝えられ、複雑な造形が出来るようになったことが江戸べっ甲の始まりとされています。
当時、亀は鶴とともに長寿のしるしとしてめでたい品とされ、べっ甲のかんざしや櫛などが各地の大名に愛用されていましたが、「奢侈禁止令(江戸幕府が士農工商を問わずに発令した贅沢を禁じる法令及び命令)」による取り締まりの対象になるほど希少で高価なものでした。
しかし、ある藩主が婚礼に際し「是非ともタイマイ製品は必要である」とし、幕府に対して「タイマイは唐より渡来した高価品であるが、わが日本内地の亀の甲で作る品は差し支えなきや」と苦肉の上申を行い、「鼈甲(すっぽんのこう)で作る品ならば一向に差し支えなし」と許可を得ました。以来タイマイの名称は鼈甲(べっこう)に改称されたという説があります。