つくり方
作業工程(材料出し~キズとり)
1.材料出し
製造したいものの仕上がりをイメージして材料を選びます。素材と一口に言っても色の濃さはそれぞれに違います。ストックから材料を選び出すこと自体べっ甲細工には重要な作業です。
2.型打ち
素材に光を当て透かしながら綺麗な柄を選びます。型打ちも作り手の感性ですから、同じ甲羅からでも作り手により型を打つ場所は異なります。
3.切り出し
型うちした線に沿って糸ノコにより甲羅を切り取ります。さらに切り出した素材と同じような色合いの部分を探し、2枚、3枚切り出します。
4.熱入れ
熱した鉄板と蒸しタオルにより甲羅に熱を入れ、甲羅の粘りを引き出し、素材を平らに伸ばします。
5.キズとり
ガンギ、小刀などで素材のキズを丁寧に取り除きます。中にキズがあるといけないので、甲羅同士を張り合わす内側ほど丁寧にキズ取りを行ないます。
作業工程(目粗し~磨き)
6.目粗し
丁寧にキズ取りを行なった面を耐水ペーパーなどで細かなキズをつけていきます。目粗しと呼ばれる作業で、この均一なキズが接合面の喰い付き力を高めます。
7.圧着-貼り合わせ
熱した鉄板で挟み込み、数枚の甲羅同士を貼り合わせます。接着剤を使わずに素材を接合することができるのが、べっ甲ならではの特質です。
8.整形
貼り合わせた材料に再び型を当て、線に沿って糸鋸で切ったりヤスリで削ったりして形を整えていきます。
9.磨き
耐水ペーパーや木賊(トクサ)で下地を整え、回転するバフ(羽布)に研磨剤を含ませ磨きます。最後は鹿革で拭き上げて完成です。
作業風景
ほとんどの工程は、作業台で行います。作業台の上に取り付けられている三角形の木の板をあたり台と言います。
ベッ甲の材料は、このあたり台の上で型打ち、削りなど作業の多くの時間を過ごします。削るのに力が入りやすく、細かな作業がしやすく、傾斜が付いているので材料を見やすいなどの利点があります。
作業台の下から伸びている棒に布が張ってあるのは、削られて落ちるべっ甲の粉を受けて集めるためです。
べっ甲は、粉々になったとしても、集めて熱を加えながら圧縮することで、また元のように硬く半透明な状態に戻る不思議な素材です。
べっ甲は希少なため、職人さん方は、作業で出たおがくずのような状態のべっ甲も大事に集めて再利用されています。
作業の様子【動画】
1.ポイント
甲羅どうしを水と熱だけで接着させるところがポイントです。
2.注意点
接合面に人の皮脂が付くと喰い付きが悪くなるので、接合面を触らないように注意します。