つくり方
絵師(えし)
江戸木版画の下絵を描く職人は絵師と呼ばれ、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重といった、江戸の人気浮世絵師たちが名を連ねます。
現在では絵師を生業としている職人はいませんが、江戸木版画の伝統の技術を用い、新しい作家の絵画を版画で制作したり、現代のアニメやアーティストたちの作品を版画にするなど、新しい創作活動も盛んに行われています。
彫師(ほりし)
絵師によって描かれた絵は彫師に渡り、絵柄の色数ごとに分けられた版木を小刀やのみを使い分けて彫り込んで行きます。
版木は色数ごとに必要になるので、作品によって5枚から20枚程度の版木を彫る必要があります。
摺師(すりし)
摺師は、面積の小さな色もしくは薄い色の版木から順番に色を摺り重ねていきます。
版木の上に絵具を置き、必要に応じて粘土を増すための糊を足し、刷毛で薄く広げていきます。
絵柄がずれないように、見当(版木の角などに彫られた印)に紙を合わせ、10~30回程度色を摺り重ねて作品を完成させます。
馬連(ばれん)の使い方を駆使することで、仕上がりに様々な効果を加えることが出来ます。
版木の上に水、絵具、糊でグラデーションを作り、職人の感覚のみで正確な濃淡を表現するぼかしや、彫りおこした絵柄に絵具をつけず、版木に直接紙を置き、馬連で摺って紙に凹凸をつける空摺(からずり)やきめ出しなど、摺師は江戸木版画独自の技法を駆使して、絵師や彫師の仕事に花を添えます。
摺り(すり)の作業【動画】
葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』の摺りの作業を収めました。
薄めの色から摺りはじめ、だんだんと濃い色が乗ってくると、荒波が立体的に浮き上がり、遠くに見える富士山が小さいながらも段々と存在感を増して行きます。
ご協力:高橋工房 早田憲康氏