つくり方
粗挽き
仕入れた木材はまだ水分を多く含んだ状態で”びしょびしょ”しています。
あまり濡れているようには見えませんが、水分のコントロールは大事な工程の1つなので、大川さんから見るとこの状態は”びしょびしょ”なんだそうです。
まずは木工旋盤という機械を使って作りたい形に削っていく作業から始まります。旋盤はチャックという回転する台に加工物を固定させて刃を当てながら削り出す機械のことを言います。
刃をセットして旋盤の電源を入れたら、深さや幅(内径)を決めて削っていきます。削る刃は作品にあわせて自分で作り、削りが悪くなったら研いだりまた新しく作ります。
乾燥
粗挽きを終えたら、次に乾燥作業に入ります。
乾燥中に木材が割れないように、削った部分を中心にボンドを塗る"割れ止め"作業をします。
昔は欅のおが屑を入れた燻製乾燥機を使って湿気を加えながらゆっくりと乾燥させることで割れのない柔らかい仕上がりになっていたそうですが、 電気乾燥機でお湯の蒸気を入れる方法でも同じ仕上がりになるそうです。
それでもただ入れっぱなしにするのではなく、およそ20日間かけて数日ごとにコンマ単位で温度を上げ、
さらにその後自然乾燥で天候の様子を見ながら2か月~半年程乾燥させていきます。
木地加工
木地の仕上げに入ります。今回はおぼんの作業工程を見させていただきました。
おぼんは裏から仕上げていきます。使うものはろくろと刃。刃はもちろん自作です。
おぼんの表面を、ろくろから出ている釘先に金槌で打ち付けしっかり固定します。ここでしっかり固定させないと、ろくろが回転している最中に釘先からおぼんが抜けて危険です。
外側の丸み・底・底のくぼみの順番に削っていき、最後に紙やすりで表面をなめらかにします。
漆加工
漆には2通りの塗り方があります。
【摺漆塗(すりうるしぬり)】
表面を保護する為に、直接生漆(きうるし)と呼ばれる漆の木から採取したそのままの樹液を何度も摺り込んで仕上げる手法。下地加工をしないので、欅の綺麗な木目や香り、艶がある作品が出来上がります。
【木地呂塗(きじろぬり)】
錆漆(さびうるし)と呼ばれる水で練った砥石の粉末に生漆を加えたものを木地に摺り込んだ後、生漆を加工した半透明の透漆(すきうるし)を下塗、中塗、上塗の3工程に分けて塗り重ね、仕上げに水研ぎで磨き上げる手法。木目がさらに際立ち、透けて見えるような仕上がりになります。
木地呂塗は透漆を3回塗るのに対し、中塗の工程で朱・紅柄などの色をつけた漆を塗り、上塗で透漆を塗る溜塗(ためぬり)は、透漆を通して色が透けて見えてまた違った良さがあります。